
キリストの受難 写本装幀

受難の諸場面を描く象牙板は3段に区分され、上段左に「キリストのエルサレム入城」、右に「ユダの接吻とユダの首吊り」、中段左に「オリーヴ山での祈りと鞭打ち」、右に「キリストの磔刑」、下段左に「十字架降下とキリストの死への哀悼」、右に「聖墳墓詣りとノリ・メ・タンゲレ(我に触れるな)」と並んでいた、とされている。上図は2連板の右側。
象牙板の周りは銀細工の二重枠で飾られている。内枠には鍍金地に宝石と小粒真珠の花飾りを交互に置き、外枠には薔薇の花による唐草紋がつけられている。この面は裏表紙だが、こちらの方が豪華になっている。象牙細工は1360〜80年頃に作られ、外枠は14世紀末頃とされている。
17世紀中頃、サン・ドニ修道院にあったギリシア語写本の外装に転用され今日に至っている。